旬に食べたい!大山の歴史と恵みがギュッと凝縮した岩牡蠣&サザエ

日本海に面する鳥取県大山町。

言うまでもなく海の幸が豊富なエリアですが、

中でも岩牡蠣とサザエは特に質が高いことで知られています。

なぜこの地のものはとびきり美味しく、人々を深く魅了するのか。

その秘密を探りに、町内に住む漁師さんのもとにお邪魔してきました。

 

 

岩牡蠣とサザエ、獲るコツとは?

 

お話しを伺ったのは、埼玉県から大山町に移住し「株式会社漁師中村」を設立した中村隆行さん。最初に1年間の漁のスケジュールについて聞いてみました。

 

「1月はサザエとアワビです。これは5月いっぱいまで続きますね。これと並行して3月15日からワカメなどの海藻類が始まります。海藻は5月の10日頃に終わるのですが、翌6月から岩牡蠣の時期を迎えます。岩牡蠣は8月15日くらいまでですかね。また入れ替わるように7、8月以降はずっとサザエとアワビです」

 

これらは全て素潜り漁のスケジュール。時間があるときは漁船でアジやタイ、ヒラメ、カワハギなどの漁にも出るそうです。今回のテーマ「岩牡蠣とサザエ」はどちらも素潜り漁で獲るのですが、何かコツはあるのでしょうか。

 

「まず岩牡蠣は海水と淡水が混じりあう汽水域にいます。左手にマイナスドライバー、右手に1キロのハンマーを持って潜ります。ポイントは砂と石がまだらになっているところ。水深は3~6メートルといったところですかね。

サザエは海藻が生い茂っているところにいます。その海藻も生え始めだったらいいのですが、枯れかけているとサザエは寄り付かなくなります。長年潜っていると自分なりの海底の見方が身に付いてきますが、まだまだ海から学ぶことはたくさんありますね」

「私は手が大きいんですよ」と見せてくれた中村さん。素潜り時には袋などを使わず、素手のみで漁を行うそうです。

大山の岩牡蠣とサザエが美味しい理由。

 

一体なぜこの地の岩牡蠣とサザエは美味しいのでしょうか?質問をぶつけてみると、意外な答えが返ってきました。

 

「この地はかつて大山が噴火し、流れ出た溶岩が堆積してできています。また、大山にブナの木々があるおかげで地中をゆっくり流れてきた良質な水にも恵まれています。溶岩は鉄の成分を多く含んでいますから、その鉄分を摂取した結果、岩牡蠣が美味しくなると私は考えています。

サザエについては完全に水、ここの軟水のおかげですね。流れ込んだ綺麗な伏流水が美味しい海藻を育てます。サザエは海藻を食べますから、サザエも美味しくなるというわけです」

 

元々、こういった地学に興味があった中村さん。自分で勉強したり、先輩や友人に話を聞いたりして学びを深めていったそうです。味の特徴としては、「潮の流れが早いので、他のところより雑味が少ないと言えるのではないでしょうか」と話してくれました。

 

 

漁師中村流、おすすめの食べ方。

 

雑味やえぐみが少ないため、素材本来の味が堪能できる大山町の岩牡蠣とサザエ。漁師流の美味しい食べ方を聞いてみました。岩牡蠣にはあの意外な調味料が合うそうです。

 

 

「まず岩牡蠣は旬に食べるのが鉄則です。6月は獲れるのですがまだ早い。7月も初旬はもう少し。7月の中下旬から8月の11、12日辺りまでが最高ですね。これは覚えておいて損はないと思います。食べ方ですがやっぱり生が一番です。レモンやポン酢をかけるのが一般的だと思いますが、実はタバスコも合うんです。ぜひ一度試してみてください。合わせるお酒は白ワインがおすすめですね。

もちろん、フライも美味しいですよ。東京だとカキフライは冬のイメージがあると思いますが、こちらでは完全に夏のものです」

 

牡蠣にタバスコ、これは試してみる価値がありそうです。続いて、サザエの美味しい食べ方は?

 

「サザエは炊き込みご飯の具にするのがおすすめです。うちに人が集まるときなどによく妻が作ってくれます。個人的におすすめしたいのが、天ぷらですね。揚げると苦みが前に出てくる感じがします。好みはわかれるかもしれませんが、私は大好きです。お酒ともすごく合いますよ。とは言いながら、最近は翌日に残るのを防ぐため、お酒は控えめにしています」

奥様お手製のサザエご飯。パーティーメニューとしても好評で、たくさん作ってもすぐになくなってしまうのだとか。

美味しく食べた後も役立つ?貝殻の活用法とは。

 

牡蠣やサザエは美味しくいただいた後も役に立つのがすごいところ。中村さん、最後に貝の有効活用法を教えてくれました。

 

「サザエはターバンシェルと言われるあの形が特徴的ですよね。中身を食べた後、貝を捨ててしまうのはあまりにもったいないです。キャンドルにすることもできますし、紐などで吊るせば飾りになります。オブジェとしても使えるんですよ」

 

もちろん、それだけではありません。

 

「サザエや牡蠣の殻は川で洗って、焼いて、砕いています。貝の殻って石灰質が豊富で栄養になるんですよね。近所に高い志で農業をやっている方がいて、その方にお渡しするようにしています。やはり循環を意識しますね。というのは、元々は海で死んで海に還るものだったはずなのに、人間が自分の都合で陸に揚げたわけです。ただゴミに出して終わりではなく、循環させるところまでやらないと無責任なのではないかと私は感じてしまいます」

 

大自然に常に敬意を払い、謙虚に漁という仕事に取り組む中村さん。美味しい岩牡蠣とサザエはシーズン中ならたいてい手に入るので、「ぜひご連絡を!」とのことでした。中村さん、本日は色々とありがとうございました!

 

 

【漁師中村】

〒689-3103鳥取県西伯郡大山町樋口141

TEL 0858-58-2171

E-mail:ryoushinakamura@yahoo.co.jp

詳しくは漁師中村のHPをご覧くだい