ふるさとの味 青木商店 板ワカメ

大山みやげの人気商品のひとつでもある「板わかめ」。はじめてこの板わかめを見たときは驚きました。わかめがなんでこんなカタチなんだろう、とても不思議でした。

これが板わかめ。大判と小判とがある。

大山町のまんなかに位置する名和にある「青木商店」県内でも屈指の板わかめの生産者です。地元の人たちにも馴染み深い「青木商店」の板わかめの作業場にお邪魔してきました。

私が作業場を訪れたのは朝の9時過ぎ。もう既に乾燥機の中には何枚もの板わかめが並べられていました。聞けば、毎朝4時から作業を始めているそう。「わかめの出回る季節は限られてるけぇ、わかめの時期はだいたい朝の4時から夜の7時頃までぶっとおしでやっとりますけん」というのは青木商店の創業者でもあり、社長でもある青木鶴市さん(80)です。

青木さんは18歳のころ大阪で働いていましたが、23歳のころ工場の機械で怪我をしてしまいサラリーマンを続けることが難しくなってしまいました。そこで故郷の御来屋に戻ってきて始めたのがわかめの製造です。はじめは板わかめというカタチではなく、私たちがよく目にするものでした。26歳のころ、鶴市さんの先輩がやっていた板わかめの作り方を見て自分でもやりだしたのが始まり。「山陰の気候ですからね、わかめが重なっとったらなかなか乾かんですけん」そう、山陰は湿気が多く、晴れの日も少ない。今や乾燥機などの設備も充実して、乾燥が気候に左右されないようになってきましたが当時は機械も何もない時代。屋根の上や庭先で天日干ししていました。この板わかめのカタチは山陰のひとたちの知恵と言えるものです。

青木鶴市さん。笑顔が素敵な優しい社長さんです。

まず、鶴市さんが生わかめを水洗いします。この洗い具合が最も大事だそう。「わかめの塩分濃度、柔らかさを見て、微妙に時間を調整するんです。洗いすぎると塩分がなくなるのはもちろん、甘みも流れちゃう」。この水分と塩分調整は言葉で説明されてもわかりませんね、というと「ずっと毎日やったらわかるよ〜」と笑う鶴市さん。そこに作業場の奥から大きな声が。「お父さん〜!さっきの水分具合がいいですけんね!たのみますよ!」と言うのは鶴市さんの奥さん。鶴市さんは、しまった!という顔をして「はいはい、わかりました…」と笑いながらわかめを運びます。2人のやりとりを見て、作業をしていた女性たちはケラケラ大笑い。私もおかしくてつい笑ってしまいました。

この賑やかな作業場で働くのは鶴市さんご家族と何名かのパートさんたち。この日は鶴市さんご夫妻の他に、長女、次女、親戚の方、昔から板わかめを作られていた女性の5人。この日は長男さんは出張中でご不在でしたが、いつもは長男さんもいて、ご家族で板わかめの製造をしています。

鶴市さんが洗い、脱水をしたわかめは女性陣たちの手に渡り、網の上にひとつずつ広げられていきます。この作業も重要。早く広げて並べてしまわないとわかめが変色したり、わかめ同士がくっついてしまったりするそう。みなさん素早い手つきでわかめの大きさや形状をみながら、あっというまに並べて行きます。パッチワークみたいですねというと、「確かにね。でも穴埋めしたりもするからパズルみたいかもしれないね」と笑うのは鶴市さんの娘さん。一枚一枚ていねいに並べられたわかめを4時間しっかり乾燥させさせます。乾燥が終わった板わかめは鮮やかなグリーン。乾燥機のドアを開けると作業場が磯の香りに包まれます。

素早い手つきでどんどん並べていかれるわかめ。乾燥後を想像しながら並べて行くそう。

鶴市さんにこの仕事をしていて何が一番たのしいですかと聞くと、真っ先に返ってきたのは「家族みんなで働けることですよ。けんかはよーするけど、家族だからすぐ仲直りできるしね」。それを聞きニコニコしながら手を動かす女性陣たち。奥さんに鶴市さんがわかめをやると聞いたときの苦労話や昔話をインタビューしてるしていると、遠くから耳をそばだてて奥さんの話をニコニコ聞く鶴市さん。みなさんのチームワークと信頼の深さ、愛情深さでおいしい板わかめができたとも言えます。

ほんとうに楽しい作業場。冬は真っ暗なうちから作業をするし寒くて辛いからこそ楽しくせんとね、とみなさん。

名和川から日本海に流れ込む大山のめぐみとも言えるミネラルたっぷりの栄養分と甘みとうまみに青木さんたちの愛のつまった板わかめ。大山のおみやげにぜひ。

【ここで買えます】

・大山恵みの里